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気分次第読み放題・11
—(柏木博,1998)—『20世紀をつくった日用品—ゼム・クリップからプレハブまで』
横井 郁子
1
1埼玉県立大学短期大学部
pp.1068-1069
発行日 1999年11月1日
Published Date 1999/11/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661905971
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道具にこだわりを持ちたくなったとき
私は整形外科で長く臨床をやっていた.病棟には誇るべき物置,というか倉庫があった.古い大学病院の建物だったため,何度かの改装を重ねるなか,四苦八苦で広さを獲得し,収納設備にこだわった味のあるものだった.しかし,何度整理しても,すぐにひどい状態になった.それだけ物の出入りが激しかった.
そこには各看護婦のこだわりの品があったのではないかと思う.とくにポジショニングのための枕にはうるさかった.ビーズ枕や羽根枕.素材に形,サイズ.今でこそさまざまなものが市販され,購入の選択肢も増えたが,つい10年ほど前までは選択の余地はほとんどなかった.そのためか,病院のカバーから,和式の蒲団特有の鮮やかな柄が覗いているものをよく見かけた.スタッフが自前で作製したものである.結構人気があり,他の職員も使っていた.頻度はそれほどでもないのだが,なくては困るサイズであり,形であり,素材であった.
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