書評
—柏木哲夫(著)—「老いを育む」
鷲田 清一
pp.691
発行日 2022年6月15日
Published Date 2022/6/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1551202702
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病も老化も心の持ちようだと,お医者さんから言われるとうれしくなる.
柏木先生はたとえばこんな例をあげる.同じ交通事故に遭い「むち打ち症」のかなりきつい症状に苦しむ二人の患者さん.その一人は,「えらい目に遭いました.でも,頭を打たなかったし,外傷もなかったので,それはよかったです」と言う.もう一人は,追突した運転手が許せないと憤り,なぜこんなめに遭わないといけないのかと「恨みの感情」をつのらせる.このあとの入院治療と回復の経過は二人のあいだで大きく異なったという.もちろん前者の退院のほうがうんと早かった.医師は存外,こころをしっかり診ているのだ.
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