特集 個を支えるグループ,グループで生きる個
看護という職業でなぜグループと個の視点が大切なのか
高嶋 妙子
1
1聖隷浜松病院
pp.724-729
発行日 1997年8月1日
Published Date 1997/8/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661905401
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はじめに
「個の確立」「主体性」「自立」「自律」などの言葉に出会うと,今なお瞬間,身が引きしまる私である.思い起こせばこれらのテーマは,物心ついた頃から常に最大の関心事であったような気がするが,いまだに確かにつかみ得たとは思えない.誰の目にも明らかな指標というか,到達点はなく,またその通り実践すれば必ず獲得できるという手順もないからであろうか.にもかかわらず,人間が人間らしく生きようとしたり,自分らしく生きようとしたりする時,避けては通れないテーマであることは間違いない.ということは,「個の確立」そのものが,生きる目的なのではないかと近頃は考えるようになっている.人間の力では答を見つけることができないというたぐいの永遠のテーマではないが,個々が一生かけて答を見つけなければならないという意味での永遠のテーマであると,そんなふうに考えた.
私は1回きりの人生を悔いなく生きたいと願っている.それは自分らしさを精いっぱい発露して悔いないという意味である.これは,「自己実現」という境地らしい.そして,ダグラス・マグレガーの,「普通の人間は仕事を通して自己実現できる」という言葉を信じるので,悔いなく仕事をしたいと思っている.組織の中で仕事をする私にとっての仕事とは,具体的には,管理者としての役割遂行である.自己実現と合わせて考えると,「どのような組織にしたいのか」が明確でないと,自分らしい役割遂行はできない.
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