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はじめに
2019年末に中国浙江省武漢にて新型コロナウイルス感染症(COVID-19)初発例(index case)が確認されて以来,ほぼ3年が過ぎた。その間,世界においてはさまざまな課題が明らかになった。これらの課題に関しては,論文などにおいても,さまざまに共有されてきた。筆者は,世界に前例のないSARS-CoV-2ウイルスによるパンデミックに対して,世界ではどのような対応がなされてきたのか,について俯瞰的に見てきた。その蓄積に基づいて,昨年(2022年)1月の本誌特集「COVID-19」においては,「各国の感染制御対策の明暗―対応成功事例,失敗事例に学ぶ1)」を著した。自らが得られる情報の幅を狭め日本の現状だけを見ていると,今回のようなパンデミック対応において,自分たちの立ち位置(Where are we stand ?)が見失われる危険がある。また,preparednessという言葉が,東日本大震災以降に頻繁に使われるようになった。これは,「対応する準備ができている」という意味であり,災害対応準備においてはpreparednessは必須の対応であるといわれている。その意味では,COVID-19により今後予測しうるリスクに関しても,事前に準備しておく(preparedness)必要がある。そのために,海外で生じた事例を学んでおくことは重要である。本稿「なぜ,グローバルヘルスの視点が大切か」においては,パンデミック発生後3年間の総括として,昨年の特集「COVID-19」以降に顕在化してきた課題をまとめ,preparednessを考えていただくための端緒となることを意図している。そのために,① 変異株に応じた対策の変更(ウィズコロナ体制への移行),② 学校閉鎖の弊害など,③ Vaccine Preventable Diseases(VPD)対応システムへの負担,の3つの論点から論ずる。
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