連載 —海外文献紹介—Current Nursingピックアップ・38
人工肛門造設患者のQOL
高見沢 恵美子
1
1聖路加看護大学
pp.502-505
発行日 1997年5月1日
Published Date 1997/5/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661905352
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Quality of Lifeの主観的側面の重要性
Quality of Life(以下QOL)は,哲学の立場から,よりよく生きるための条件がいかに整っているかという日常生活の質,具体的には日常生活上の機能ないし能力がどのくらいあるかということと,現実にどのくらいよく生きているかという自分の生に対する満足感で表される幸福の状態の,2つの意味を持っていると言われている.QOLの本質は自分の生に対する満足感または幸福感であるが,その重要な条件として日常生活の質が問われていると言える.
Gurnら1)は,人間自身がもつ安寧の感覚,人生の満足,および幸福観をQOLの指標として用いている.Flanagan2)は,QOLの領域が,①身体的・物質的安寧,②ほかの人との関係,③社会・地域・および市民生活,④人間的発達および達成,⑤レクリエーションの,5つの広い分野に分類されることを報告している.QOLの指標について,社会経済学領域3, 4)と保健医療領域の研究5)において概念化されているものは,生活者の認識および生活条件である.QOLは,Wengerら6)も述べているように,従来保健医療領域で注目されてきた患者の症状や薬剤の副作用などの生物医学的要因のみならず,心理的および社会的な要素を含んだ包括的概念である.Glenda7)も指摘しているように,QOLの研究は概念のあいまいさと多義性を内包したまま進んできている.
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