特集 口腔ケアに注目を
口腔ケアの基本的な視点とその技術—V. ヘンダーソンに依りながら
北原 稔
1
,
寺岡 加代
2
1神奈川県厚木保健所
2東京医科歯科大学予防歯科
pp.882-890
発行日 1996年10月1日
Published Date 1996/10/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661905184
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はじめに
今まで歯科保健医療分野では「歯科保健(指導)」や「口腔衛生(指導)」という言葉が使われ,「口腔ケア」はあまり使われたことはなかった.それが今日,高齢化社会を迎え急速に保健医療福祉の垣根が低くなり,同時に種々の職種の連携が進みつつある.その結果,「口腔ケア」1)の名の下に看護婦やヘルパーなど多くの職種による「口腔衛生への看護や介護のかかわり」の必要性が見直されてきた.
そのような状況下で我々歯科職も従来の「口腔衛生」的な視点を広げることが必要になってきた.その直接のきっかけとなったのは,著者のひとりが歯磨きの動機づけとしての術者磨き(専門職が患者の口腔で歯磨きを実施してあげる)を実施される側つまり患者として体験し,さらに口腔ケアの相互体験実習2)を実施したことである.それまで,我々歯科側はもっぱら医療従事者の視点からの口腔ケアであり,患者の目の高さに立つことはあまりなかった.自分が歯を磨かれ,口腔内のケアを受けてみると,基本的な看護としての意義をふまえることの重要さを痛感させられるとともに,他の身体の清潔とは異質の意義も実感されてくる.
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