連載 カラーグラフ
JJN Gallery・3
『思慮深い看護婦』—ジャン=バティスト=シメオン・シャルダン画
酒井 シヅ
1
1順天堂大学・医学部医史学
pp.198-199
発行日 1996年3月1日
Published Date 1996/3/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661905027
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絵は18世紀フランスの家庭看護婦を描いたものである.患者の食事の用意をしているのであろう.テーブルの上にフランスパンとゆで卵があり,床に置かれた鍋のふたの間からしゃもじの柄がのぞいている.鍋の長い柄を腕にかけた看護婦は卵を割って卵料理を始めようとしているのであろうか.卵を割る音がまわりの静けさをやぶって聞こえてくるような雰囲気である.テーブルと看護婦が,窓からはいるやわらかな光のなかにくっきりと浮き上がっている。いかにもシャルダンらしい絵である.
作者シャルダンは18世紀フランスを代表する風俗画家であった.この絵から,看護婦のやさしくて,思慮深い人柄が読み取れる.シャルダンが理想とした看護婦であろう.病人が看護婦に期待した姿を表わしているのかもしれない.
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