ナースのためのヘルスサイコロジー講座・2
“行動主義”と“学習理論”
五十嵐 透子
1
1金沢大学医学部保健学科
pp.176-182
発行日 2001年2月1日
Published Date 2001/2/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661903674
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駄目な自分から抜けられない学生
エピソード2
臨地実習での出来事です.ある学生が,ある日突然,何の連絡もなく休んでしまいました.話をすると「実習に行きたくない.自分は駄目な人間で,こんな自分がクライエントに接しても状態を悪くしてしまうだけ.自分自身でもこんな自分のことが嫌な自分が嫌だ.失敗を恐れていてはいけないと思うし,自分の意見や思いを言って,他の人に相談したり,話していかないといけないと思う.でもうまくできない」と涙ながらに話してくれました.
さまざまな見方ができますが,たとえば次のように考えてみることができます.彼は思春期のある時期に,父親の転勤に伴い嫌々ながら転校しなければならなかったのですが,そのおり,担任教師から「おまえは駄目だ」といわれたと受け止めていました.それ以前から,長男としてしっかり者で周囲に気を配り,周囲との協調性を過剰に気にしてきていたようです.担任からの言葉を否定的に捉えてしまってからは,特に彰校という新しい環境で新しい友人もできにくい年齢や環境であったことも加わって,いっそう自己表現を行なわないようになりました.それは,相手からひどいことを言われないようにするための“回避行為”が形成されてきた,と解釈できます.
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