特集 疾患・外傷のある顔—知っておきたい「見た目」の問題
「異形の人」をとりまく現状—日本と海外の比較
石井 政之
1
1ユニークフェイス東京
pp.402-406
発行日 2000年5月1日
Published Date 2000/5/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661903460
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はじめに
右顔面に赤アザのある私
私の顔の右半分は生まれつきの赤アザ(単純性血管腫)で覆われている.血管腫は皮膚疾患に分類され,形成外科医療では治療の対象になっている.だが,私のアザは痛みも痒みもなく,膨張する気配もないために病気という実感がない.アザに有効とされるドライアイス治療とレーザー治療を何度か受けたが,現代の医療技術では,アザの痕跡がまったく消滅する「完全な治癒」には至らないことを知って以来,治療への関心がなくなった,治療によってアザを消し去ることよりもむしろ,なぜこの顔で生きることが困難なのか,に関心が移った.顔にアザなどの難治性疾患のある人は,五体満足のために障害者ではない.その一方で,健常者(普通の人)が当たり前に享受している匿名性がないという独特の環境におかれる.私はこのような人たちを障害者でもなく健常者でもない存在として「異形の人」1)と呼んでいる.そして自分自身の体験と,同じ境遇にある人たちを取材し本2)にまとめ,その出版と同時に異形の人たちをサポートするセルフヘルプグループ『ユニークフェイス東京』を設立した3).このように私の立場は当事者であり,客観的視点をもちうる第三者ではない.本稿は当事者の視点からみた,日本と海外における異形の人をとりまく現状の違いである.
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