書評
第三の脳―皮膚から考える命,こころ,世界
西村 多寿子
pp.322-323
発行日 2008年4月1日
Published Date 2008/4/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661101244
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「皮膚の語り」に耳を傾けてみる
皮膚は外側にある臓器である
清拭や褥瘡ケアなど,ベッドサイドでは皮膚についての理解に基づいた看護が求められるが,本書は皮膚科学の最新情報が得られるだけでなく,皮膚を通して,命やこころ,人間とは何かといったことまで考察している点で,皮膚関係のテキスト類とはまったく趣を異にしている.著者は化粧品メーカーの研究所の主任研究員で,本書の中でも「私は皮膚の生物学者Skin Biologistであって,皮膚科医Dermatologistではない」と立場の違いを明確にしている.
「はじめに」を読んでまず驚くのは,「皮膚は外側にある「臓器」である」と主張しているところだ.本書のタイトル「第三の脳」とも関係するが,「第一の脳」は頭蓋骨の中,「第二の脳」は消化器,そして「第三の脳」が皮膚だと説明する.脳の機能を情報受容や情報処理の要だとすれば,消化器研究者のガーション博士は「機能としての消化器は脳と同じだ.感じ,判断し,行動する指示を出す.消化管は第二の脳である」と主張した.この考え方に従えば,「皮膚も脳である.言わば第三の脳だ」と宣言したのが著者である.
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