巻頭カラー連載 A-LSD!病床からの誘惑・8
フレームの中の生
甲谷 匡賛
,
久保田 テツ
1
1大阪大学コミュニケーションデザイン・センター
pp.1057
発行日 2007年12月1日
Published Date 2007/12/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661101167
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- 文献概要
甲谷さんの映像を制作するために、ビデオカメラと三脚を担いで彼の病室を何度か訪れた。病室に到着し軽く挨拶するとすぐに、カメラをセットして録画ボタンを押す。僕は甲谷さんの柔らかい表情が大好きで、いつも顔のアップを記録した。そして彼の子どものような笑顔がビデオテープに収まる度に、こっそりと喜んだ。
普段、人物の表情を撮影する際、こまめにフレームの位置を調整する。フレームから被写体が外れてしまわないよう、必死にカメラを動かす。が、甲谷さんを捉える時にその必要はほとんどない。彼がカメラのフレームから外れることが無いからだ。だから撮影の時はいつも甲谷さんの顔面の変化に集中できた。フレームに留まりつつも、笑った後にすぐ泣き顔になる彼のめまぐるしい表情を、ファインダーに見続けることができた。
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