最近の検査技術
原子吸光分析法—フレームからフレームレスまで
長谷川 敬彦
1
1名古屋大学環境医学研究所
pp.195-202
発行日 1981年2月1日
Published Date 1981/2/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1543202227
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(1)ナトリウム塩を炎にこぼしたときには黄色く輝き,カリウム塩では赤く輝く.このようにナトリウムやカリウムなどがその金属固有の発光を示すことは古くから"炎色反応"として知られていた.
この現象はそれぞれの金属原子を構成する最外殻電子が,(基底状態)炎の熱エネルギーを吸収して次のより高いエネルギー準位の軌道に移行する(熱励起).しかし炎の中の熱エネルギーの状態は不安定であるため,再びもとの基底状態のエネルギー水準に落ちてくる.この励起状態から基底状態へ移行する際のエネルギー(△E)の放出が"光のエネルギー"として行われた場合が"発光"である**.この場合原子はそれぞれに固有の原子殻構造を持っているので,熱によって励起され,ついで基底状態にもどる際に発光される光はそれぞれの金属原子固有の波長を持つわけである(図1,2).この熱励起に基づく発光が化学炎を用いる炎光分析,さらに高温のアーク,スパーク高周波誘導プラズマなどを用いた発光分析の基本的原理である.
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