巻頭カラー連載
アフリカが紡ぐ命の物語・12【最終回】
井上 冬彦
1
1井上胃腸科・内科クリニック
pp.1053
発行日 2007年12月1日
Published Date 2007/12/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661101166
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- 文献概要
アフリカ・サバンナに通い続け,その旅も40回になった.現地では一日中自然にどっぷりと浸かりながら過ごしてきた.何度も素晴らしいシーンに出会い,たくさんのことを感じてきた.その中から,大切なことを一つずつ学んできたように思う.まずは「自分を癒す大切さ」.自分が癒されていなければ良い医療などできないのだ.次いで学んだのは「人を癒す行為がもっとも自分を癒す」ということ.この癒しの循環が広がっていけば世の中はもっと良くなるのに,といつも思う.そしてもっとも大切な学びは,本当の生と死の意味を知ったこと.いのちの本質とは「バランスと変化」.その中では生も死もなくすべてが一つにつながっている.その中で「バランスを保ちながら,個としてどう生きるか」が私の新たなテーマになった.今思っているのは,リスクを恐れずに,自分の内から発せられる二つのメッセージ(「本当に好き」というメッセージと,自分の本質から離れたときに戻りなさいと教えてくれるメッセージ)を聞きながら,一歩ずつ自分の本質を求めていくしかない,ということ.朝日の前,そして夕陽の後に闇があるように,いのちの輝きはリスク(死)を背負いながら自分の本質を生きなければ得られないのだと思っている.
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