連載 HIV/AIDSケア 再考・5
HIV/AIDSの診断と治療
潟永 博之
1
1国立国際医療センター エイズ治療・研究開発センター
pp.764-767
発行日 2007年8月1日
Published Date 2007/8/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661101065
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はじめに
1996年にプロテアーゼ阻害薬が臨床導入され,HIV診療は一変した.すなわち,多剤併用療法(HAART:highly active antiretroviral treatment)が可能となり,それまでは考えられなかったことであるが,感染者血液中のHIV量を検出限界以下にすることが可能となったのである.一桁だったCD4陽性細胞数も,日和見感染予防が不要となる200を上回ることができ,患者は社会復帰が可能となった.
HAARTが可能となり10年が経過した今日,HIV感染があっても適切な治療を受けていれば,おそらくは天寿をまっとうできるのではないかという期待も,いよいよ現実味を帯びてきている.この朗報は確かにすばらしいことであるが,一方で,HIV感染を甘く考えさせ,ハイリスクグループを危険な行為へと導いている一因でもある.わが国は,先進国の中で唯一,HIV感染者が未だに増加の一途を辿っている国であるが,その感染者の全てがHAARTで救済されているわけではない.
HAARTの実際とそれに伴う諸問題に触れ,臨床上,重要な日和見感染症を概説したい.
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