連載 明るい肉体⑦
血管
天田 城介
1
1立命館大学大学院先端総合学術研究科
pp.1034-1036
発行日 2006年11月1日
Published Date 2006/11/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661100664
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「天田くん,いま,嘘ついてるでしょ.顔は誤魔化せているけど,首筋の血管がドクドク浮き上がっているよ.アッハハ.顔では繕っても,首筋の血管は誤魔化せないのよ.首筋で感情をよく観察して.本音がわかるから.勉強になった? じゃぁ,授業料ちょーだい(笑).」
こうして私は,自称「恋のゴルゴ13」こと30歳の先輩看護師に授業料として缶ジュースを奢ることになった(当時まだ10代であった私は完全に弄ばれていた).その後,たった110円(当時の自動販売機の缶ジュースの値段)の授業料でその「極意」とやらを身に付けた私は,確かに患者さんの首筋の血管をじっくりと観察するようになった(ほんまかいな).隆起する血管,青白い頼りなさそうな血管,きれいなY字型を描く血管,はちきれんばかりに自己主張する血管,それぞれあって,そしてそのつどで血管は表情を変え,見ているだけで実にオモシロかった.
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