連載 明るい肉体②
声
天田 城介
1
1立命館大学大学院先端総合学術研究科
pp.558-559
発行日 2006年6月1日
Published Date 2006/6/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661100310
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「あの人に声かけられると不思議と『ハイ』って感じで,素直に動いちゃうでしょ.でも,全然,嫌な感じはしないし,威圧的でもないし.きっと誰かを動かすってその動かそうとする人の声が重要なんだろうか.声に濃縮されたその人の雰囲気みたいなものを人は信じるのかな」
◎声について語ることが私はもっとも苦手であり,得意である.個人的に,幼い時から「声」にはどうしようもないコンプレックスを抱いてきた.たとえば,昔ドラマで岩城晃一の声を初めて聴いた時,胸の鼓動の高まりを抑えることができないような興奮した感情に襲われた.「何て羨ましい声をもっているのだ!」と強烈に引き寄せられながらも,「あの声に比べて私の情けない声ときたら……」という自己嫌悪をもたらすゆえに何とかその魅惑的な声を避けたいという感情のアンビバレンス.だから,これから書くエピソードは私にとってとても書き難く,書き易い.
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