特集 腹臥位療法のいま 実践・研究・根拠
急性呼吸不全患者の腹臥位療法
柳澤 八恵子
1
1聖路加国際病院救命救急センター
pp.525-529
発行日 2004年6月1日
Published Date 2004/6/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661100458
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近年,ARDS(acute respiratory distress syndrome;急性呼吸窮迫症候群)や下側肺障害(dependent lung)を呈した患者に,腹臥位療法を併用することで,酸素化が改善されるという報告がされている.そこで,当救命救急センターにおいて腹臥位療法を行なった急性呼吸不全患者の症例を振り返り,腹臥位療法の有用性を検討してみたい.
腹臥位による酸素化改善の機序
横隔膜の動きの変化
自発呼吸がしっかりある患者の横隔膜移動距離は,腹側に比較して背側のほうが大きい.しかし,鎮静剤,筋弛緩薬を使用している患者の場合,背側の横隔膜の動きが抑制され,背側の横隔膜はほとんど動かず,下側肺に無気肺が発生しやすい.とくにICUに入室している患者で低酸素血症に陥っている状態では,鎮静剤や筋弛緩薬を使用している場合も多く,そのような患者では,背側の横隔膜の動きはほとんどなく,無気肺を発生している可能性が高い.これらの患者を腹臥位にすることで,背側の横隔膜の動きは良くなり,無気肺の改善につながる.
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