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はじめに
私が腹臥位療法を学ぶきっかけとなったのは,2000年に福岡で行なわれた老人泌尿器科研究会(現在の老年泌尿器科学会)市民公開講座での,故・並河正晃医師による『現行の寝たきり老年者排泄ケアが抱える問題点と,解決のための一方法』の抄録を通してでした.そこには,仰臥位での排泄介助を受ける高齢者の問題が取り上げられていました.高齢者は,乳幼児よりは体重が重く,脚力の低下によって,排泄介助を受けてもベッドサイドでのポータブルトイレ使用が困難となり,仰臥位での排泄ケアとなることが多いということを指摘.その上で,仰臥位での排尿排便姿勢について,ヒトを含む哺乳類雄雌の下部尿路・下部消化管の構造と排尿排便姿勢の一定のきまり(並河医師は,「排泄のルール」と称しています)のすべてに違反しており,寝たきり廃用症候群(拘縮,慢性の尿路感染症,褥瘡,嚥下障害,排便障害,喀痰の排出困難など)の多くの疾患・病態を憎悪させる原因のひとつであると述べられていました.その仰臥位での排泄ケアの問題を解決すべき体位として紹介されていたのが,腹臥位療法の一つである「上半身挙上腹臥位」でした(図1)1).
私は,高齢者の適切な排泄ケアと介護負担の軽減を実現する方法の1つとしての腹臥位療法について理解を深めたいと思い,2001年,故・並河医師より腹臥位療法を学び始めました.その後,腹臥位療法の考案者である故・中山壽比古医師,故・並河正晃医師と研究を続けてきた研究メンバーである小田原弘子氏,橋爪伸幸氏をご紹介いただき,共同研究を始めました.2004年にはこの研究グループメンバーと共に,腹臥位(うつ伏せ)療法研究会を設立し,現在に至っております.本編では,この腹臥位(うつ伏せ)療法研究会の活動を中心に述べさせていただきます.
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