特集 腹臥位療法のいま 実践・研究・根拠
腹臥位療法研究をレビューする―傾向と課題
操 華子
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1聖ルカ・ライフサイエンス研究所/聖路加国際病院臨床研究支援ユニット
pp.514-524
発行日 2004年6月1日
Published Date 2004/6/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661100457
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はじめに
腹臥位は,体位,ポジショニングの1つである.文献を概観してみると,次の2つの領域で主にこの体位は適用されてきている.
1つは,高齢者の廃用症候群の改善,予防方法としてとりあげられ,「腹臥位療法」あるいは「うつ伏せ療法」として推奨されている.そもそも並河が老年内科医の立場で老年者の尿失禁対策を模索するなかで,腹臥位が望ましいことを明らかにしたことが,高齢者の体位として腹臥位が注目されるきっかけになったといえるであろう1).その後,中山が高齢者の膝・股関節の拘縮に有効な治療法として「うつ伏せ療法」を発表した2).1994年から両者の共同研究開発が実現し,老年者の心身機能に関する研究報告が発表された3-5).また,有働は腹臥位を1996年に,長期臥床による体幹後面褥瘡や関節拘縮などの合併症を伴った重度のパーキンソン病患者の治療の一方法として紹介した.有働が紹介した「腹臥位療法」は文献のなかでは「有働式腹臥位療法」あるいは「腹臥位療法 Udo's methods」と表記される場合がある.
もう1つの領域は,「腹臥位人工呼吸」「腹臥位呼吸管理」「腹臥位療法」と呼ばれる重度呼吸不全の治療の1つとして,1980年後半よりその効果が再評価されてきている6).1976年に腹臥位療法の急性呼吸窮迫症候群(ARDS)患者への有効性が最初に発表されている7).
近年,上述した腹臥位療法が慢性期,急性期領域において,さまざまな患者を対象に調査・研究がなされ,その効果が発表されている.本稿では,「腹臥位」「腹臥位療法」に関する研究・調査をレビューし,その傾向と今後の課題について述べる.
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