連載 看護の未来を決めるのは誰?⑭
「人は誰でも間違える」 だからこそ看護が行なうべきこと
横江 公美
1
,
北浦 暁子
1PACIFIC21
pp.148-150
発行日 2006年2月1日
Published Date 2006/2/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661100033
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1999年,米国有数の医療系シンクタンクであるThe Institute of Medicine(IOM)は,3360万人の入院患者を対象にした医療実態の調査を行ない,その分析結果を発表した.レポートのタイトルは“To Error is Human”.『人は誰でも間違える――より安全な医療システムを目指して』(日本評論社)という邦題で2000年に出版され,わが国の医療安全に関する考え方にも大きな影響を与えた報告書である.IOMが報告した医療事故の実態と分析は,病院で患者ともっとも長い時間接することになる看護師にとっては身につまされる内容である.医療事故は,あらかじめ回避することが可能な人災であることが多い.しかし,100%の確率で事故を防ぐことは不可能である.被害を受けた患者とその家族の苦痛に間近に接し,さらに当事者となれば加害者になってしまう医師や看護師にとって,「To Error is Human=人は誰でも間違える」という表題は胸に突き刺さる.
日本でも医療事故とその訴訟は,年々,増加する傾向がある.日本での医療事故に関連する医療訴訟件数は,1992(平成元)年には1580件,2002(平成10)年には2706件に増加し,1.7倍になった.このうち,看護師を対象にした訴訟は27件から56件に増加し,2倍以上になっている.なぜ,医療事故は減らないのか? 医療水準や看護水準が落ちているのか,あるいは病院の環境が悪化しているのか,それとも今まで泣き寝入りしていた患者とその家族が訴訟を起こすようになったからなのか.
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