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よりよい看護研究を行なうために
土屋 健三郎
1
1慶応大学医学部公衆衛生学教室
pp.52-56
発行日 1964年8月1日
Published Date 1964/8/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661912330
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昔の医療の概念では,看護婦は医師の単なる介助者であり,どぎつい表現をすれば一つの従属物にすぎなかった。しかし,医学の進歩,医療形態の変化に伴って,看護婦の学問的素質の向上が要求され,同時に看護婦は医療という大きなオーケストラのなかで,重要な地位を占めつつある。もちろん,看護婦の社会的地位の向上は,従来の封建的徒弟制度を打ち破ってこそ得られるものであろう。しかしながら,「看護婦の質的,社会的向上」を,単に「人権尊重」の立場からだけ主張しているのでは,いつまでたっても,真の意味での看護婦の独立はあり得ない。そこに課せられた一つの大きな命題は看護婦じしんの実力の向上である。
つまり,その根拠地をつくるものは,看護学の進展であり,独立である。そして,そのためには多くの,質のよい研究がなされ,積み重ねられなければならない。1年ほど前にこの雑誌にも書いたように,看護そのものは「行為」であって,それは医療のなかの一分野である。その学問的背景は医学一人におかれていたのは一昔前のことである。いまや医療を支えるものは医学だけでなく,社会学その他の学問的背景を必要とする。昔は,看護は医学→医療の関係のなかで,医療のほんの一部分でしかなかった。看護が医師の行なう医療のなかで,密接な有機的な連係をもたなければならないと同時に,独自の学問的背景を展開する必要に迫られてきたのは最近のことである。
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