特集 出生前診断の倫理的問題を問う
[看護の実際]出生前診断を受けた妊婦への関わり—子宮内胎児死亡に至った事例を通して
森 佳代
1
1神奈川県立看護教育大学校母子看護課程
pp.380-387
発行日 1995年5月25日
Published Date 1995/5/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1611903372
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はじめに
ME機器の発達は,胎児の異常の発見と予後診断を可能にした。それに伴って,胎児の生命をめぐっての論議をせざるを得ない多くの問題が,私たち周産期医療に携わる者に投げかけられるようになってきた。命あるものすべてを救命すべきなのか。胎児診断の結果,出生後の生命維持が不可能と考えられる児や,出生後に重篤な後遺症を持って生きねばならないことが予測される児の救命はどう考えるのか。その判断は誰がするのか。現状では,こうすべきという共通の結論を私たちは持っていない。
私は6年間の臨床勤務のなかで,重篤な疾患が胎児診断されても児の生命を救うことに重点を置いた医師の方針に疑問を感じたり,その方針に従う妊産婦に戸惑っていた。そして,胎児診断を受けた妊産婦に深く関われずにいた。
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