特集 出生前診断の倫理的問題を問う
[看護の実際]出生前診断を受けた妊婦・家族への看護—児の生存を拒否した事例を通して
安積 陽子
1
,
野尻 雅子
1
,
小森 牧
1
,
福島 洋子
1
1北海道大学医学部附属病院産科看護管理室
pp.373-379
発行日 1995年5月25日
Published Date 1995/5/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1611903371
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妊娠中に発見される胎児異常には,致死的な異常から軽度の異常までさまざまな程度がある。近年,周産期医療のなかでも胎児診断・治療の進歩はめざましく,これまで生存が困難であると考えられていた胎児異常のなかにも,治療可能な場合もあることがわかってきた。しかし,胎児の異常の程度にかかわらず,異常を指摘された両親・家族の悲嘆は大きく,人工妊娠中絶を希望する事例も少なくない。妊娠週数が22週未満の場合には,両親・家族の意向に沿うことも選択肢の1つであるが,それ以降の妊娠週数では胎児診断に基づき,倫理的問題を踏まえた対応が要求される。
今回,妊娠24週の時点で特発性胎児水腫の診断のもとに当科に紹介され,入院・管理することになった症例を経験した。医療側では,胎児治療により胎児の状態を改善しながら妊娠を継続することによってより良い状態での出生が可能と判断したが,妊婦・家族は児の生存・胎児治療に否定的な見解を持ち,調整に困難をきわめた。
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