症例
子宮内胎児死亡をきたしたリステリア症
春日 美智子
1,2
,
稲垣 昇
1
,
長谷川 清志
1
,
豊島 究
1
,
伊藤 仁彦
1
,
西野 るり子
1
,
北井 啓勝
1
1社会保険埼玉中央病院産婦人科
2慶應義塾大学医学部産婦人科
pp.1205-1208
発行日 1996年9月10日
Published Date 1996/9/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409902671
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リステリア症は,リステリア菌によって引き起こされる人畜共通感染症である.妊婦が本症に罹患した場合,母体の症状は感冒様で重篤感がないにもかかわらず,子宮内胎児死亡をきたす.本菌は,酪農製品を中心に食品媒介性感染する.本菌は低温での増殖が可能で,塩分にも耐性がある.そのため先進国での食品の保存と流通形態と相まって,本症は近年増加している.日本における本症の罹患率は欧米の10分の1で高くないが,致命率は約30%である.
本症の診断は,患者検体の塗抹染色,菌分離・培養による.妊婦の発熱には白血球数が高くなくても,血液培養をする意義がある.治療は,ペニシリン系とアミノグリコシド系の併用が有効であり,再発予防には3〜6週間の投与が必要とされる.また,本症で肝炎をきたすことがある.
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