特集 「助産士」を考えよう
羞恥心からみる出産という場
大出 春江
1
1東京文化短大
pp.554-560
発行日 1996年7月25日
Published Date 1996/7/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1611901506
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コミュニケーションの問題としての羞恥心
出産を差恥心の観点からみると,そこで展開されている相互作用はどんな特徴をもっているだろうか。羞恥心という人間の心に関わることは,心理学の分野で一番扱われていると予想されるが,意外にも感情(情動)の扱いは心理学では動機,学習,記憶,認知などの領域に比べて少ない。辞典などの記述をみても見方によっては不当な扱いを受けていると思われるほど十分ではない。
たとえば,人間の基本的情動には何が含まれるかということについて研究者の間では必ずしも共通見解がなく,怒りや恐れ,喜び,驚き,悲しみといった情動に関しては比較的研究者間でほぼ共通するものの,関心,軽蔑,苦痛,恥,罪悪を基本的情動とするかどうかは研究者によってばらつきがある1)。羞恥心を,照れ,はじらい,はにかみ,恥などの概念まで含む2)ことにすると,刺激に対する反応といったレベルだけではとらえられない広がりをもつことが,こうした事情を説明するように思われる。
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