書評
私たちの日常の時間を止め,自分をふり返ることをうながす一冊
角田 直枝
1
1日本訪問看護振興財団事業部
pp.81
発行日 2009年1月15日
Published Date 2009/1/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1688101246
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本書の大半でアスペルガー症候群の診断を受けた綾屋紗月氏が,自分の体験を1つひとつ丁寧に記述している。そこには,想像以上の不思議な世界があった。自分が何を感じて,何をしたいかという,自分の内側の声を聞くこと,臭いや音や温度といった外界からの情報を処理するプロセスが,細かく,綿密に綴られている。ただ,このようにたくさん書いてあるのに,私にはわからない。その隔たりは,私にとって読み始めには多少の痛みを伴うものであったが,読み終わってからは,くり返し,くり返し開き,読み返したくなるものになっていた。
その丁寧な記述の1つとして,冒頭には空腹について書かれている。空腹というのは,どのような身体の体験なのか,身体の小さな変化をなぜ自分は空腹と認識するのか,そして,その身体の変化が空腹だと結論づけられたあと,食べるためには外界の情報をどのように分析し,統合しているのかが,書かれている。
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