特集 母性とはなにか
母性の歩みをふり返る
松村 尚子
1
1大谷大学(社会学)
pp.19-25
発行日 1987年1月25日
Published Date 1987/1/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1611207047
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社会的・文化的に規定される「母性」
南太平洋の島に住むある未開民族では,女は活発有能で集団をなして労働に勤(いそ)しむのに,男は警戒心が強くて些細な侮辱や噂話を気にし,自分が弱く孤立していると感じるために絶えず不機嫌である。女は頭を剃って飾り気なく自分の仕事に忙しいのに,男は長髪で美しい飾りを身につけて買い物に出かけ,彫刻や絵や踊りの練習に明け暮れる。10歳ばかりの少女は他の社会にみられないほど生き生きと聡明で企画性に富むのに対して,からかわれ甘やかされ放任される少年は,気まぐれで移り気で,何物をも把握する能力をもたない。
またすぐ近くに住む別の民族では,女は男に劣らず自己主張が強く,心身ともに強靱で,子どもを産んだり育てたりすることをひどく嫌い,できれば避けようとする。
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