ナースの作文
3年間をふり返つて,他
東田 亘子
1
1和歌山赤十字高等看護学院
pp.50-54
発行日 1959年4月15日
Published Date 1959/4/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661910834
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桜の花が咲き乱れる頃,私はこの学院に入学した。近所の人達は「看護婦さんになるの?」「3年もいくの?」とか大部分の人の中に軽蔑の色がみられたのは,当時の私の心のせまさでしようか。母に送られてふるさとをあとに車中の人となつた時,ふと涙が頬をつたい,あわてて拭いたものでした。小さい時から気の弱い意気地なしの自分はいつもコンプレツクスをいだいていました。でもナースとは小説や,映画の中のヒロインのようにそんなロマンテイツクなものでないことは,よく知つておりましたので,不安定ながらも心の奥に小さい固いものをしつかり抱いていたことはたしかです。
初めての寄宿舎生活,新らしい友達,今までとすつかり変つた生活環境,そして新らしい専門的な講義,すべてが珍らしく,そんな日々を一生懸命(当時の私にとつて),過して来ました。そして6カ月後の思い出ぶかいキヤツピング,純白のキヤツプを戴き愛の灯をともしてナイチンゲール誓詞を唱えた時,はじめて自分はナースになるのだということをはつきり自覚したのです。
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