ちょっとサイエンス
身体で働くタンパク質
牧 智子
pp.617
発行日 1992年7月25日
Published Date 1992/7/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1611900618
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◎人間はタンパク質を横取りする動物
タンパク質というと動物性とか植物性とか,自分が食べる立場で考えてしまうことが多いようです。このとき,人間は自分の身体がタンパク質からできているという事実はそっちのけにしているような気がします。人間にとって食べ物としてなじみ深いミルクの中のカゼイン,卵白の中のアルブミン,トウモロコシのタネの中のゼイン。これらは皆,それぞれの個体が赤ちゃんや胚に栄養を供給するための栄養貯蔵物。これを人間が横取りして,タンパク源としているわけです。
ジュースの宣伝文句に「本当においしいものは人間だけでは作れません」というのがありますが,おいしいものどころかおよそ食べ物という食べ物は人間以外のものの力を借りなくてはできないのです。タンパク質は豊富でも硬くて消化の悪い大豆を,豆腐に変えて食べる人間の英知には感動するにしても,大豆の胚のための栄養を失敬していることは認めなくてはならない事実です。
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