MEDICAL SCOPE
エリスロポエチンの産科での応用
島田 信宏
1
1北里大学医学部産婦人科
pp.619
発行日 1992年7月25日
Published Date 1992/7/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1611900619
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Erythropoietinエリスロポエチンという名前を皆さんは御存知ですか。これは一種のホルモンで,成人では腎で生産され,赤血球をつくる増血作用を示すものです。最近になって,検査法が開発されたためにこの物質の量をはかることが容易になりました。また,遺伝子の組みかえによってこの物質をつくることも可能になり,一段と医療のなかで脚光をあびてきたのです。
現在は主として内科や泌尿器科の先生方を中心に用いられているのですが,この方面の知識にくわしい助産婦さんのなかには名前を知っている方もいることでしょう。慢性腎不全になると人工透析をしますが,この透析を行なっている患者さんは,貧血という大変に大きな合併症を背負っていることが多く,ときには輸血を必要とする症例もあります。この慢性腎不全例の貧血は,腎不全のために腎でエリスロポエチンが作られなくなり,赤血球造成機能がなくなって発生するのです。したがって,このような透析例の貧血には,エリスロポエチンを投与して治療にあたっています。現在では,エリスロポエチンがもっとも使われるのがこのタイプの治療です。
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