MEDICAL SCOPE
C型肝炎と周産期医療
島田 信宏
1
1北里大学病院産科
pp.267
発行日 1992年3月25日
Published Date 1992/3/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1611900537
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輸血後におこる肝炎として有名だったB型肝炎のことは,諸君はもう十分に知りつくしていることでしょう。また,輸血後にかかる肝炎には,非A非B型肝炎(non-A,non-B hepatitis)があることもご承知のはずです。この非A非B型肝炎の大部分がC型肝炎といわれるもので,このウイルス,すなわち病原体がつきとめられたことは新聞等をとおして大きく報道されました。そして,日本人のウイルスも見つかったのです。今月はこのC型肝炎と私たちの周産期医療との関わりを考えてみましょう。
周産期医療では,輸血はしばしば行なわなくてはなりません。その輸血で感染するとなれば,予防法を確立しなくてはなりません。B型肝炎はHB抗原の検査によってスクリーニングができるのですが,C型肝炎の場合は抗体のスクリーニングもれがあり,完全に安全な血液の鑑別ができずどうしても感染例が出てしまうのが現状です。また,もし輸血後にB型肝炎にかかったとしても,多くの人は急性肝炎の状態にはなりますが,これが治ってさらに慢性肝炎,肝硬変へと移行する症例はきわめて少数です。ところが,C型肝炎では感染すると,その60%もの人が慢性肝炎になり,肝硬変をへて肝癌になるのです。これは大きな問題ですが,どうしたことか,男性に多く女性は割合に少ないとされています。
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