連載 ケアと現代・1【新連載】
異なることと出会うために
佐藤 俊一
1
,
岸 良範
2
,
平野 かよ子
3
1東京白十字病院医事課
2埼玉医科大学短期大学
3日本赤十字看護大学・地域看護学
pp.34-38
発行日 1992年1月25日
Published Date 1992/1/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1611900487
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連載を始めるにあたってあたりまえの現実から見えること
避けられない現実としての人と人の関係
科学技術がどんなに進歩しても,物がどんなに豊かになっても,永遠に変わらないのが人と人とのかかわりである。最近では,対人関係の問題が極めて現代的な様相を提示している。例えば,学校教育の場における先生と生徒の関係において,「先生が建前ばかり気にして子どもと真剣にかかわってくれない」ということや,逆に「生徒の方が自分の殻にとじこもっていてその子らしさを出してくれない」ということなどをいろいろなことで見聞きする。家庭においては,親から自然に伝承されていた文化が子どもに伝えられず,学校や企業で常識を教えないと,本当に何も知らずに「自分のやり方がごく普通の行動の仕方だ」と思いこんで疑わない人を作り出している。
人と人の関係はどんなに世の中が進歩しても,一人の個人が一人の人間になっていく過程で誰もがそこに苦しみを体験したり,喜びを感じることを通してしか,自分のことにしていくことができない。したがって,対人関係の問題に対して,あるパターン化された対応方法を考えることは基本的に不可能であって,必要とされるのは,基本的に他者や社会に対してとる態度を経験的に学ぶことである。何でもがマニュアル化されないと伝わらないという昨今において,このことは大いに強調されるべきである。
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