特集 不妊
不妊患者への心理的ケア
清水 哲也
1
,
千石 一雄
1
1旭川医科大学産婦人科学
pp.703-706
発行日 1991年8月25日
Published Date 1991/8/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1611900386
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はじめに
不妊症に必理的要因がどの程度影響しているのか,客観的立証は容易とはいえない。しかし治療を休止したり,基礎体温の測定を休ませたり,転地など生活環境の変化によって妊娠に至ることはしぼしば経験するところである。また飯塚ら1)がAID症候群と呼ぶように,AIDを実施しようとする周期に限って排卵が遅延したり,時には無排卵になるなど,不妊に精神的要素が関与していることは事実であろう。
近年,人脳皮質—間脳・下垂体—卵巣の内分泌系,また大脳皮質—間脳—自律神経系の調節機構が明らかになるにつれ,心理的要因が排卵機構や卵管攣縮に影響を及ぼすことは明らかにされつつある。さらに不妊症患者の多くは情緒不安定,神経症傾向,不安と社会不適応性の心理的特徴を有するとする報告2)もあり,このような精神的未熟性の強い女性が強度の精神的緊張や葛藤(ストレス)を余義なくされる状況下においては機能障害をひき起こし,不妊の一因となるものと推測される。
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