研究・調査・報告
不妊治療後の妊婦の心理
水谷 喜代子
1
,
八木 由紀子
1
,
熊谷 香代子
1
,
岡野 真実
1
,
青嶌 利優
1
,
石井 幸子
1
,
市川 直美
1
,
久美 京子
1
,
田中 博子
1
,
藤本 成美
1
,
三浦 悦子
1
,
渡辺 美保
1
,
梁 善光
2
,
武谷 雄二
2
1東京大学医学部附属助産婦学校
2東京大学医学部産科婦人科学教室
pp.75-79
発行日 1996年1月25日
Published Date 1996/1/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1611903403
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はじめに
わが国における不妊夫婦の割合は,全夫婦中10〜15組に1組といわれている1)。不妊症治療はここ10年間に検査や体外受精・胚移植をはじめとする治療技術がめざましい進歩をとげ普及してきている。そして従来の治療方法では妊娠成立が望めなかった難治性の不妊症とみなされていた夫婦でも妊娠が可能となってきた。その結果,全妊婦に占める不妊治療後の妊婦の割合は徐々に増加傾向にあることは容易に考えられる。
不妊治療中の患者の抱く“子供がほしい”という願望と,“なかなか子供ができない”という焦りは,当事者以外には計り知れないものがあり,それだけに不妊治療の結果,妊娠が成立した妊婦の喜びは一層大きいものであろう。しかしその反面,妊娠中の異常や異常児の出生,さらに妊娠中の自己管理のあり方についての不安といったものが,通常の妊婦に比べ強いのではないかとも推測される。このような背景を考慮すると,不妊治療後の妊婦に対する助産婦をはじめとする医療スタッフの果たすべき役割は大きいと思われるが,これまでのところこの問題に関する報告は極めて少ない2,3)。
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