特集 不妊
我か国の体外受精および配偶子卵管内移植の現状
馬岡 陽
1
,
野田 洋一
1
,
森 崇英
1
1京都大学医学部婦人科学産科学
pp.697-702
発行日 1991年8月25日
Published Date 1991/8/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1611900385
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体外受精胚移植法が初めてヒトに応用され,ヒトの生殖過程の一部分を人工的環境下で行なうことが実現したのは10年程前のことである1)。以来,不妊治療の一方法として体外受精胚移植法(In vitro Fertilization-Embryo Transfer:IVF-ET)1)や配偶子卵管内移植(Gamete Intra-Fallopian Transfer:GIFT)2)(図1)が広く世界中で実施されるようになり,それまで挙児を断念せざるを得なかった患者に多大な恩恵を与えてきた。IVF-ETやGIFTはその原理自体が優れたものであるため,もしこれらの方法により高い治療効率を得ることが可能となれば,挙児を希望する不妊患者にとって人きな福音となろう。しかし,IVF-ETやGIFTの治療法としての評価はいまだ定まっておらず,現実には,胚移植当たりの見かけの妊娠率こそ20〜30%と比較的高率を報告する施設もあるが,最終的に評価されるべき生産率(挙児率)をみると,日本を含めた世界各国でおよそ10〜15%にとどまっている3)。
本稿では,この現実を踏まえ,日本産科婦人科学会内に設置された「生殖医学の登録に関する委員会」の平成2年度報告4)に基づき,IVF-ETおよびGIFTの実施の状況,方法,成績,問題点,そしてそれらを克服するために現在どのような努力がなされているかについて述べてみたい。
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