私と読書
母性の概念が立体的に見えてくる—「母性—こころ・からだ・社会」を読んで
前田 ひとみ
1
1名古屋市立中央看護専門学校
pp.606-607
発行日 1989年7月25日
Published Date 1989/7/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1611207661
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助産婦を職業とし母性にかかわっている私であるが,母性とは何か,今改めて問いなおすと自分の言葉で言い表わすことができない。今まで私が母性としてとらえていたことは,主に母親の「児に対しての感情」であった。この本を読んで,母性には様々な側面があり,それらが組みあわさって母性という概念が形成されており,簡単にはとても言い表わせるものではないと感じた。また,今まで断片的にしか理解していなかった母児をとりまく諸問題(身体面,精神面,それに及ぼす社会状況・制度等)が,この本を読んで立体的に見えてきた。
本書は,医学・社会福祉・歴史学等の各分野から,それぞれの領域での母性観にもとついて現状と問題点を指摘し,今後の方向性を示唆してある。思春期から育児期という,ライフサイクルの中で母性が一番濃密となる部分が凝縮して書かれており,中絶問題,社会的サボートシステムにまで広く目を向けて構成されている。そしてこの本全体を通して,母性の形成の原点が人間形成にあることが強調されている。
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