特集 親子
現代親子論
父性と母性の社会心理
岡堂 哲雄
1
1聖路加看護大学
pp.516-521
発行日 1974年10月15日
Published Date 1974/10/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401204893
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
親と子の接点
親と子の関係は,あらゆる人間関係の基盤である.生物的なつながりとしての親と子は普遍的である.しかし心理的社会的な親子関係には時代的地域的なちがいが見られる.親の子に対する養護やしつけ方をみると,ひとつの社会でも大きな変動がある.たとえば,親と子の社会的地位(身分)の規定は,終戦を境にして変化してきたのは周知のとおりである.しつけ方も伝統的な方法から,いわゆる合理的な方向へと変ったことはしばしば指摘されている.この変化は,親と子それぞれに対する社会の期待が変化したことによって生じたものである.
わが国においては,かつて子どもは神から授かるものであり,生れた子どもは超自然的な力の加護をえて,はじめて育つと考えられていた.しかも子どもを育てる超自然的な力は,親だけでなく,子どもを取りまく社会の人びとを通じて現われるとされた.その行為としての教育こそ,子どもを成長させ,社会の一員としていく「しつけ」であった*.
Copyright © 1974, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.