母性保健特集 1.その総論
社会機構の中の母性保健
中野 ツヤ
1
1東京都民生局婦人部
pp.32-34
発行日 1963年2月1日
Published Date 1963/2/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1611202488
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「最近,流産が多いときいたのですけれど,本当でしょうか.そしてもし本当だとしたら,どういう原因なのでしょう?」と,この間,民生委員をしているある御婦人からたずねられた.たしかに,私の身近かにも多い.つい2カ月ばかり前にも,職場の若い同僚が,勤務中に流産してしまい,あわてて御主人に連絡をとって,近くの産婦人科の病院に入院させたが,都庁に働く共稼ぎの女子職員で,私の知る範囲では,妊娠から出産まであまり問題がなかったという人の方が少く,多くの人が,悪性のつわりで相当日数を休んだり,流産のおそれがあるといって,病院へ通ったりしている.年齢から考えても,ふだんの健康状態からみても,妊娠や出産が無理な人たちでは決してないし,保健的な知識も十分あると思われる大学卒の人たちであるのに.
東京都の死産の率が全国平均より高いということは,2,3年前はじめて知った.しかもその率が戦後1年ごとに増加し,人工死産では全国平均を下まわっているのに反して,自然死産がはるかに高くなっているということは,たしかに問題を提示しているといえよう.
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