Medical Scope
IUGRと最近の血流診断
島田 信宏
1
1北里大学病院産科
pp.609
発行日 1989年7月25日
Published Date 1989/7/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1611207662
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パルス・ドップラー法とか,カラードップラー法などが開発された今日では,胎児や母体の血流診断から多くの異常が発見され,その診療に役立っていることは皆さんもよく御存知のことと思います。IUGR(子宮内胎児発育遅延)のような発育の悪い胎児では,臍帯動脈での血管抵抗が高く,血流が流れにくくなっているということは,以前この欄でも述べたことがあります。そして,いよいよ胎児の状態が悪化してくると,臍帯動脈では血流の逆流現象もみられ,胎児循環がスムーズにいっていないことを示します。こんなときには臍動血流は低下し,胎児の下行大動脈も血管抵抗が強くなり,血流が少なくなり,下半身はますますやせこけていきます。ただ,脳を守るために脳動脈の血管抵抗は下がるので,脳への血流は保たれます。したがって,IUGRでも頭部は割合大きくなるのです。
妊娠中毒症になっても,胎児がIUGRになる症例と,ならない症例とがあります。どのような状態がこの差を生むのでしょうか。妊娠中毒症になっても,母体の子宮動脈の血流が血管抵抗の上昇によって少なくなることがない限り,胎児はIUGRにならないこともわかりました。したがって,妊娠中毒症になっても,その胎児がIUGRになっていくかどうかは,母体の子宮動脈の血流を測ることによってある程度予測することもできるようです。
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