Medical Scope
妊娠中の腎動静脈破裂
島田 信宏
1
1北里大学病院産科
pp.937
発行日 1988年11月25日
Published Date 1988/11/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1611207514
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妊娠中には,身体中の血管が破たんして大出血に至るということがときどきあります。もっとも有名なのが,妊娠中に血圧が高くなって脳の血管が破れて脳出血をおこしたり,子癇の発作を何回もくり返している間に脳血管の破たんが生じるといった場合です。ところが,非常にまれなケースですが,脳以外の血管でも妊娠中に破裂して,大出血がおこるということがあります。そのひとつが腎の大血管です。
子宮と腎とは形もその機能も違うのですが,血流だけを考えると,なぜかとても似ている部分があります。妊娠すると子宮は増大して,胎児を育てるためにそれまでとは違って多量の血流がやってきます。腎も妊娠後半期には血液が水分でうすまって水血症の状態になるので,非常に多くのうすい血液が流れ込んできます。このように,妊娠後半期には腎への血流量は一段と増加してくることになります。したがって,なんらかのときに,異常な圧力となって腎の大血管が破れて大出血がおこるという事態は,理論的には発生してもおかしくないといえるでしょう。
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