Medical Scope
先天性心疾患の出生前診断とそのスクリーニング
島田 信宏
1
1北里大学病院産科
pp.454
発行日 1987年5月25日
Published Date 1987/5/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1611207147
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去る1月17日,横浜で第5回日本周産期学会の学術集会が開催されました。今までで一番多い280名の方々が出席して盛大でしたが,そのなかで2つのシンポジウムが行なわれました。1っは妊娠30週未満の分娩方法をめぐる諸問題,もう1つは先天性心疾患の診断と治療です。今月は後者の話題で,先天性心疾患の出生前診断について解説してみようと思います。
諸君もよく知つているように,超音波断層法の著しい進歩によって,胎児の先天性疾患や奇形の多くが出生前に診断されるようになりました。先天性心疾患もその1っです。ことにパルス・ドップラー法では,単に形態だけを診断する従来の方法と異なり,胎児の心臓内の形態的な構造,弁の動き方,そこを流れる血流の方向や血流量を数字で表わすことができるので,今日では,先天性心疾患や大血管異常などの多くが出生前に診断されています。そして,胎児時代に心不全となってしまったような症例には,母体を介してジギタリス剤を投与して治療したり,心不全のためにたまった腹水や胸水を胎児の腹腔穿刺や胸腔穿刺で抜きとったり,胎児輸血をしたりして治療できるようになり,多くの生存例が発表される時代となりました。また,不整脈やブロックの症例も出生前に診断でき,出生と同時にペースメーカーを埋め込む手術を行なって成功した例がかなりあります。
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