連載 周産期の母子の看護
心理社会的アプローチ・10
妊産褥婦の母性意識の形成とその援助—母親役割取得過程との関連において
新道 幸恵
1
,
和田 サヨ子
2
1国立公衆衛生院衛生看護学部
2聖母女子短期大学
pp.77-81
発行日 1987年1月25日
Published Date 1987/1/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1611207057
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妊婦の母性意識の形成とその影響要因
女性が,「可愛い,好き」などと子供に対してもつ特有な気持ちを母性意識という。その意識は,女性の乳幼児期からの生育過程において,母親との関係を中心に,小さな子供の世話などの経験をとおして形成されていく。妊娠・分娩・育児という母親役割を実際に引き受ける過程において,母性意識はいっそう発達するともいわれている。また,母性意識が豊かな女性は,母親役割をよりスムーズに引き受けられる,といわれるように,母親役割と母性意識をよ相互に強い関連がある。
妊婦の多くは,妊娠したことを喜び,母親となる喜びに浸る。妊娠する前には子供を好きと思わなかった人でも,そのような気持ちを抱く人が多い。このことは,妊娠によって母性意識が芽生えたことを意味する。このような妊娠を受容する気持ら,つまり妊婦の母性意識は,妊娠期間中に発展していくが,必ずしも妊娠経過とは比例しない。なぜならば,妊娠を受容する気持らは,妊婦の身体状態・心理状態,胎児の発育状態,夫や実母などの家族関係の影響を受けるからである1〜3)。
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