特集 分娩看護管理
分娩中の産婦への心理的援助—母親役割適応への視点から
和田 サヨ子
1
1聖母女子短期大学
pp.1002-1006
発行日 1984年12月25日
Published Date 1984/12/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1611206558
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はじめに
ロジャーズは,「人間行動の理解にとって重要なのは,その人の生活をとりまく環境でもなければ,事件でもない。最も重要なのは,これらの環境や事件をその人がいかに認識するかということである1)」と述べている。
行動を決める決定的要因は,その個人の知覚の場(perceptual field)である。──その人自身によって見られるままの(as viewed by the personhimself)その人間と彼の世界になってくるということである2)。ロジャーズによれば,感情や体験が自己概念に矛盾するとそこに否認が生まれる3)。あらゆる不適応は,誤った体験の結果である。この誤った体験は,健全な自己実現的パーソナリティの自然の発達を妨害するものである4)。 ロジャーズの自己概念理論によれば,不適応行動とは,情動的および生理的反応にもとづく自分自身の評価と他者の評価との間の葛藤の結果である。このような葛藤を生じる情況下に置かれれば,いつも不安をおぼえ,その人は,そういう場面で傷つきやすく,これを無意識的に脅威と感じるのである5)。
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