連載 周産期の母子の看護
心理社会的アプローチ・9
褥婦の基本的ニーズへの援助と母親役割取得過程
新道 幸恵
1
,
和田 サヨ子
2
1国立公衆衛生院衛生看護学部
2聖母女子短期大学
pp.1134-1137
発行日 1986年12月25日
Published Date 1986/12/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1611207032
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褥婦の情緒的遅れ(emotional lag)の体験
産褥期においては,心身相関的(psychosomatic)な観点からみて,重要な看護の要点がある。褥婦の身体は,胎児を育んでいた命綱である胎盤が剥がれたあと,娩出された新生児を育む身体へと変化する。この身体の変化は体内ホルモン環境の劇的な変化によるもので,それに伴って褥婦は形態的変化をも経験する。すなわち,突出した腹部は,胎児の娩出により,一瞬にして平担になるが,褥婦がそれですっきりするわけでは必ずしもなく,種々の不快症状を体験するのである。
褥婦は,妊娠中の様々な不快症状や分娩時にピークに達した陣痛からの解放感を満喫しようと期待している。ところが実際には,そんな解放感は得られないことも多い。つまり,分娩期の陣痛体験にひき続き,再び期待はずれの体験を余儀なくされるわけである。その体験とは,分娩終了後の脱肛痛・縫合部痛・後陣痛などである。
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