連載 おとめ山産話
マタニティ・ブルーのこと
尾島 信夫
1
1聖母女子短期大学
pp.632
発行日 1986年7月25日
Published Date 1986/7/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1611206923
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ブルーマンデイ(働きたくない月曜)という中年サラリーマンの心境を示す言葉は知っていたが,マタニティ・ブルー(maternity blues)という産後の抑うつ状態を示すスマートな言葉を初めて知ったのは,3年前に,女性精神科医カタリーナ・ドールトンさんの「産後の抑うつ」(邦訳「マタニティ・ブルー」)の書評を「地域保健」誌に書いた時である。
私はかねて産褥病棟を回診すると思いがけなく,メソメソと涙を見せている人にぶつかったり,いったん退院した褥婦が強度の精神障害を表わして連れて来られたり,またそんな人が2,3週間後にはケロッとなおって挨拶に来たりするのを経験し,これはきっと分娩時の胎盤喪失による一種の欠落症状であろうと考えていたが,同書によってまったく開眼されたように感じた。私自身の十二指腸潰瘍穿孔後の抑うつの経験と思いあわせて,大変有益な知見だと感じて他の専門誌にも抄記した。(「産婦人科治療」46巻4号,「ペリネイタルケア」 2巻3号)。
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