Current Reserch
マタニティーブルー—産科スタッフの役割
吉田 敬子
1,3
,
中野 仁雄
2
,
R. Kumar
3
Keiko Yoshida
1,3
1九州大学医学部神経精神医学
2九州大学医学部婦人科学産科学
3ロンドン大学精神医学研究所周産期医学
pp.1251-1260
発行日 1992年10月10日
Published Date 1992/10/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409901051
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はじめに
女性は,産後に,生涯のうちで最も精神の障害をきたしやすい時期を迎える。欧米ではこのことにつとに関心が高く,出産後の精神障害に関する症例報告や臨床研究は19世紀のEsquirolやMarćeに始まるといわれ,1960年代以降にはその数が増した。英国では,出産に関連する精神障害の臨床および研究を目的として専門学会,Marće Societyが1980年に発足した。以来,この10年間に産後の精神障害をめぐって,その病態像の整理と疾患分類,あるいは疫学調査による各疾患の頻度に関する研究報告が数多く積み重ねられた。
産後の精神障害に対する臨床的アプローチを有効なものとするためには,発症の要因や原因,および予後の調査のために,妊娠中から分娩,産褥まで一貫した調査研究が必要である。研究方法は年々洗練されてきており,それでは,産科スタッフと精神科スタッフの連携が必須の条件とされる。これまでに,産後の精神障害がまれではないこと,また,妊婦の産科的・精神科的既往歴,あるいは妊娠中から産褥早期における精神状態の把握はその後に発症する,より重篤な精神障害の予測や予防に役立ち,また早期の適切な対応を可能にすることもわかってきた。加えて,最近の研究では,新生児のその後の情緒や認知の発達にも影響を及ぼすことが明らかになりつつある。
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