連載 医療ソーシャルワーカーの相談窓口から
障害児に学ぶ生命の尊さ
田戸 静
1
1葛飾赤十字産院医療社会事業部
pp.528
発行日 1986年6月25日
Published Date 1986/6/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1611206904
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"丈夫で五体満足な赤ちゃんを産みたい"と女性(妊婦)であれば誰でもが願うであろう。長い妊娠期間を経ていよいよ分娩。そして新しい生命の誕生。この瞬間,赤ちゃんは,母親はもちろんのこと,周囲の誰からも祝福されて,家族の一員として迎えられる。この世に生命を受けた赤ちゃんみんなが,こうであって欲しいと切望する。しかし,もし赤ちゃんが重度の障害などをもって生まれた場合,家族の受けるショックは,祝福というにはあまりにも大きすぎる。
こうしたショックを少しでも緩和・軽減するために,ソーシャルワーカーは,家族(主として夫)が医師から赤ちゃんの症状や障害の程度を聞いたあとに全て面接を行なう。その際,大方の家族は悲嘆と困惑とが混然とした状態で途方にくれ,なすすべがない。しかし,赤ちゃんはどんな場合も1人では生きられないし,親によって与えられたかけがえのない生命は,両親の豊かな愛情を必要としている。そして,何も知らずに生まれた生命は,その瞬間,瞬間を一所懸命生きようとしている。ソーシャルワーカーは,この厳粛な事実を家族がしっかりと受けとめ,認めていけるように,時間はかかっても赤ちゃんのために"親として何をしてやれるか"を家族と一緒に筋道をたてて考えていく。
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