巻頭言
機械でないことの尊さ
畠山 一平
1
1横浜市立大学医学部生理学教室
pp.551
発行日 1964年8月15日
Published Date 1964/8/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1404201344
- 有料閲覧
- 文献概要
"計算機としての脳"(The Brain as a Com—puter)という書物の中でGeorgeはWienerのcyberneticsやAshbyのhomeostat等を引用して人間の感情及び智的活動を電子計算機の設計と同じ立場に立つて説明している。人工頭脳という言葉はもう珍らしいものではなくなつたが,今や機械が頭脳にたとえられるのではなく頭脳が機械にたとえられるようになつたのであろうか。近頃,De La Mettrieの"人間機械論"の翻訳が再版されたのも故なしとしないであろう。
医学においても自動診断や自動データ処理の立場から,電子計算機の応用が頻りに試みられている。その効果については疑問を持つ人も少くないが,一方その価値を強調する余り,"この診断機の能力は経験数年の医師をもしのぐ"という表現をする人もある。循環や呼吸についても従来不可能あるいは困難のため未解決のまま放置されていた数学的問題が電子計算機により解かれようとしている。最近"Circulatory Analog Computers"という本が刊行されたが,これは一昨年オランダで開かれたこの種のシンポジウムの記録である。
Copyright © 1964, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.