連載 源流への旅
子産み子育て考・14
安産祈願
末光 裕子
1
,
鎌田 久子
2
,
菅沼 ひろ子
3
,
宮里 和子
4
,
坂倉 啓夫
1東京江戸川区・教育相談室
2成城大学文芸学部(民俗学)
3聖母病院分挽室
4国立公衆衛生院衛生看護学部
pp.424-428
発行日 1986年5月25日
Published Date 1986/5/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1611206880
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§はじめに
出産は病気ではなく,人間生活における生理現象の一つとはいうものの,妊婦にとっても胎児にとっても,生死にかかわる大事なので,それに対する不安感も強い。従来,この不安感を解除する手段として,神仏への祈願とか各種の呪術的行為を行なうことが多かった。いわゆる安産祈願という名称で包括される習俗である。
産科学の進歩した現代においては,出産時の母子の安全は,昔に比べて守られるようにはなってきているが,無事に生まれるだろうかという不安感や,難産でないことを願う気持ちに変わりはないだろう。特に,産科の中で妊婦の心理的側面に対しては,安全性を第一に重視していたため,配慮が十分に払われてこなかったこともあって,安産祈願は,今日,産育習俗の中でも根強く継承されてきているのではないかと思われる。
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