連載 母子栄養1ページレッスン
これからの食教育
西村 薫子
1
1自治医科大学附属病院栄養部
pp.269
発行日 1986年3月25日
Published Date 1986/3/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1611206846
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近年,乳児ビタミンK欠乏性出血症が高頻度に発生する第一義的な原因として,母乳中のビタミンK量の不足が指摘されている。事実,発症を恐れて,母乳から人工栄養に切り換えて哺乳する例もあると聞く。
小児のビタミンK欠乏症としては,新生児メレナが古典的疾患として知られ,その治療法もほぼ確立している。ところが,この約10年間に多発した乳児頭蓋内出血は特発性ビタミンK欠乏症とよばれ,その治療・予防法の確立のために研究班が組織されている現状である。研究報告によると,栄養別発生頻度は母乳栄養児85.6%,混合・人工栄養児はそれぞれ5%である。ビタミンKの投与で出血傾向が改善されることから,その主原因として,出生後のビタミンK依存性凝周因子の生成遅延,ビタミンKの胎盤移行性が乏ししこと,腸内細菌によるビタミンK合成能が低いこと,母乳中のビタミンK不足などがあげられている。
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